2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ケネス・バーク『恒久性と変化』29(翻訳)

第三章 隠喩としての遠近法 不調和による遠近法の例 ニーチェ流の方法は、度を超えてそれを具体化した弟子の作品、ニーチェのデカダンスと永劫回帰の理論に基づいて明快な歴史の形態学を打ち立てたオズワルト・シュペングラーに最もよくあらわれているだろう…

ケネス・バーク『恒久性と変化』28(翻訳)

ニーチェにおける敬虔と不敬虔の葛藤 ニーチェはこの運動に全身をさらしたという意味で特に意味深い存在である。彼の主題は、特に再定位にあった(あらゆる価値の再評価)――だが、不確定な新たなものに直面することで、詩人としての彼はすぐさま、そうした問…

ケネス・バーク『恒久性と変化』27(翻訳)

論理に関する保留 感情と論理との区別、直感と理性との区別は、その他との関わりでどれだけ役に立つとしても、ここでは考える必要はない。鳥の一団にとって、そのうちの一羽が飛び立つときに続けて飛び立つことは本能であり――同様にまったく論理的な振る舞い…

ケネス・バーク『恒久性と変化』26(翻訳)

やむを得ない労働と象徴的労働 単調な骨折り仕事は純然たるやむを得ない労働であり、象徴的労働は個人の最も深いところにあるパターンに従ったものだと認めれば、やむを得ない労働と象徴的な労働とを区別できる。象徴的労働はより敬虔である。例えば、どこか…

ケネス・バーク『恒久性と変化』25(翻訳)

第二章 新しい意味 福音伝道にある不敬虔の要因 このように考えると、過去の定位を再構築する試みは、不敬虔の側面をもつことになろう。というのも、敬虔さの定義によってまず認められるのが、ガス工場の労働者が彼らなりの敬虔さをもっているということなら…

ケネス・バーク『恒久性と変化』24(翻訳)

システム構築としての敬虔さ 更に、敬虔さはシステム構築でもあり、物事を完成させようとする欲望、経験を統一した全体に適合させようとすることでもある。敬虔さは、なにとなにが共にあるのが正しいのかについての感覚である。そしてそれは次のようなやり方…

ケネス・バーク『恒久性と変化』23(翻訳)

第二部 不調和による遠近法 第一部は「定位」一般を論じた。第三部は「新しい」定位の原理を論じるつもりである。中間の第二部は、移行そのもののあり方を扱うこととなろう。こうした変容の諸条件には単なる知的問題ばかりでなく、深い感情的問題が関わって…

ケネス・バーク『恒久性と変化』22(翻訳)

ヒューマニズム的な、或は詩的な合理化 誘いかけよりも支配に力点を置く科学的基準という文化の側面が排除され、縮小される傾向にあるなら、修正された合理化は擬人的、ヒューマニズム的、或は詩的な方向に向かうに違いない。宗教ではなく詩があげられるのは…

ケネス・バーク『恒久性と変化』21(翻訳)

.. 第五章 魔術、宗教、科学 合理化の三種の体制 我々は定位に関する章を三種の合理化の体制、魔術、宗教、科学についてもっとしっかり考察することで終われたかもしれない。魔術は主として自然の力の支配を強調し、宗教は人間の力の支配を、科学は第三生産…

ケネス・バーク『恒久性と変化』20(翻訳)

定義の必要 状況は次のように譬えることができる。鳥の一群が、繁殖していって、非常に多様な生活の様式を発達させていった。彼らはいまでは異なった場所に異なった餌を探しに出かけ、それ故、被る危険の種類や程度も相当に違っている。また、彼らの餌を集め…

ケネス・バーク『恒久性と変化』19(翻訳)

多様なロマン主義的解決 温室のなかで再び古い結びつきを観察し、問題に突き当たる詩人もいる。彼らは古代地中海の伝承を思い起こす。アナトール・フランスのように、メランコリーとイロニーが混じり合ったなかで、「本の余白に走り書きをする」。選ばれた者…

ケネス・バーク『恒久性と変化』18(翻訳)

.. 第四章 スタイル スタイルによる訴えかけの本質 その最も単純なあらわれにおいて、スタイルは迎合行為である。「正当なことを言う」という催眠的、暗示的過程によって好意を得ようとする試みである。明らかに、正当なことについて同意がある場合に最も効…

ケネス・バーク『恒久性と変化』17(翻訳)

訓練された無能力としての職業的精神病質 読者は、ヴェブレンの訓練された無能力という概念がデューイの職業的精神病質と全く同じように扱えることに気づかれたかもしれない。ヴェブレンの用語と入れ替えることで、より明瞭に職業パターンの両義的な性質を見…

ケネス・バーク『恒久性と変化』16(翻訳)

文学への影響 こうしたことすべては、書くという職業に特有の職業的精神病質にどういった影響を与えるのだろうか。現在のところ、我々は三つのはっきり区別される解決法を認めることができる。感情、性、冒険、過剰、精神病などに取り組む芸術家がおり、とい…

ケネス・バーク『恒久性と変化』15(翻訳)

テクノロジー的精神病質 こうしたすべてのうちにあり、関連し、それらを越えた部分にも底流にもあって、混乱の主たる責任を負うべきは、テクノロジー的精神病質である。恐らくそれは、その基本的パターンにおいて世界の新たな原理に寄与している精神病質であ…

ケネス・バーク『恒久性と変化』14(翻訳)

現在の職業的精神病質 資本主義、金融、個人主義、自由放任主義、自由市場、民間企業など様々に呼ばれる精神病質が存在し、その強い競争的な性格は、会社と独占権(カルテル化)の成長、それに対応し、公務員の昇進の基礎となる(「やり手」であることは資格…

ケネス・バーク『恒久性と変化』13(翻訳)

第三章 職業的精神病質 関心の本性 もしバッタがしゃべれるとしたら、「オーストラリアスズメのつがいの習性」について学問的かつ上手に話されるより、「バッタを食べる鳥」の話により興味を抱くだろうことは想像に難くない。関心という要素は、コミュニケー…

ケネス・バーク『恒久性と変化』12(翻訳)

動機は諸状況を速記したものである 連合によるつながり、刺激と反応のもと考えるとき、動機についてなにを言えるだろうか。現実の生の経験が実験室の実験のように単純ではなく、夕食のベルのような明白な場合は滅多にない非常に複雑な解釈がなされると理解さ…

ケネス・バーク『恒久性と変化』11(翻訳)

より大きな全体の一部である動機についての更なる考察 要約しよう。動機づけの概要が変化する限り、行動の動機とするものにも変化が予想される。動機はテーブルのように人が見に行ける固定した事物ではない。それは解釈に関わり、当然、全体としての世界観の…

ケネス・バーク『恒久性と変化』10(翻訳)

動機の戦略 まとめるとこうなる。自分の行動をお気に入りの社会規範で説明する人間がいたとき、彼は精神分析家のあいだで生活する人間が自分の利害をリビドー、抑圧、オイディプス・コンプレックスなどだけで論じ始める場合と同じ合理化を行なっているのだと…

ケネス・バーク『恒久性と変化』9(翻訳)

定位における快感原則 ある意味において、あらゆる定位には快感原則が含まれているが、それは現実原則と対立するわけではない。我々は経験を主に快不快の見込みとの関わりで特徴づける。定位は有用性の枠組みである。「最善の動機」によって自分の振る舞いを…

ケネス・バーク『恒久性と変化』8(翻訳)

.. 第二章 動機 動機はより大きな意味の枠組みの下位区分である AがBに非常に悪感情を抱いているのを観察する精神分析医が私だと仮定しよう。更に、Aは古風な道徳を守っており、彼のBに対する憤りは常に道徳的義憤の形を取っている。AはBが非常に卑劣…

ケネス・バーク『恒久性と変化』7(翻訳)

合理化と定位とのつながり 合理化という言葉は、推論とは異なり、精神分析から来たようである。フロイト派が動機についての特殊な用語法を発達させるやいなや、非フロイト派の動機についての用語法を特徴づけるような言葉が必要であると感じた。かくして、教…

ケネス・バーク『恒久性と変化』6(翻訳)

解釈の誤りとしてのスケープゴート 上記のことを、我々の用語法からは除外される「スケープゴート」の概念が、現代の批評家によってしばしば用いられる典型的な状況を考えることで検証してみよう。第一に、顕著なもの同士の結びつきは変動することを認めよう…

ケネス・バーク『恒久性と変化』5(翻訳)

意味についてのパヴロフ、ワトソン、ゲシュタルト派の実験 定位における連鎖を示す基本的な実験はいまでは古典的なものとなっているが、簡単に繰り返しておこう。最初にパブロフの研究があり、思弁的心理学の曖昧な連想説に、条件反射の実験によって正確な経…

ケネス・バーク『恒久性と変化』4(翻訳)

訓練、手段の選択、逃避 不満足な状況があるとき、人間は自然にそれを避けようとする。複雑な社会構造のなかでは、多くの解釈と回避手段が可能である。そのいくつかは他に比べてずっと役に立つということもあろう。また、すべての手段が誰にでも平等に実行で…

ケネス・バーク『恒久性と変化』と読む3(F・L・アレン『シンス・イエスタデイ』)

ヴェブレンの「訓練された無能力」という概念 ヴェブレンの「訓練された無能力」という概念は、特に、正しい、そして間違った定位の問題に関連しているように思われる。訓練された無能力によって、彼は人の能力そのものが盲点となり得る事情をあらわしている…

ケネス・バーク『恒久性と変化』を読む2(安部公房『砂漠の思想』、パヴロフ『大脳半球の働きについて』)

第一章 定位 あらゆる生物は批評家である すべての有機体は自らについての数多くのしるしを解釈しているという事実を認めることから我々は始められる。鱒は、針に引っかかることもあれば、顎が裂けて幸運にも逃れ去ることもあるが、その賢さを自分の批評的評…

ケネス・バーク『恒久性と変化』を読む1(F・L・アレン『オンリー・イエスタデイ』)

序 『恒久性と変化』は大恐慌が始まるころ、我々の伝統が甚だしい変化に向かい、恐らくは永久に崩壊してしまうのではないかという一般的感情が存在した時期に書かれた。当時の作家たちは、ばらばらになることを防ぐためにまとめあげることがあったが、これは…

マクタガート『存在の本性』(途中まで)

第一巻 序 第一章 序 1.この本で私は、存在するすべてのもの、あるいは、全体としての存在に属する特徴についてなにが明らかにできるか考えてみたい。また、我々に経験的に知られている存在の多様な側面に関する一般的特徴から、理論的、実際的などんな帰…