2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ケネス・バーク『恒久性と変化』59(翻訳)

「感傷的誤謬」 おそらく、倫理が内的-外的なものの合併を含むことは、我々が様々な名前で呼ぶ「感傷的誤謬」の入り組んだ働きを追うことで論じるべきだろう。対象が人の目的や性格を与えられているときに、我々はそれをアニミスムと呼ぶ――詩人は、彼らそし…

ケネス・バーク『恒久性と変化』58(翻訳)

倫理化傾向の諸相 支持手段を倫理化し、ある種の神格化の裏返しであるより複雑な方法としては、エドウィン・シーバーが深く心を動かされる「ホワイトカラー」の田園詩を集成した『カンパニー』、特に「ボス」の章がそうであって、この近づきにくい人物はもっ…

ケネス・バーク『恒久性と変化』57(翻訳)

支持手段に倫理性を与える おそらく、利己主義から利他主義への移行を見るもっとも容易な方法は、作品の倫理化であろう。あるいは、我々は作品の概念を何らかの意味での支持手段を含むものに拡張するかもしれない。鉱夫が金を探すのは利己的だろうか、利他的…

ケネス・バーク『恒久性と変化』56(翻訳)

利己、利他の合併 ヴェブレンの略奪的と職人的との区別は、もう一つの倫理的な混乱を我々にもたらすかもしれない。利己主義と利他主義との曖昧な関係である。ピアジェが記しているところによれば、子供の考えが社会化されるのは、自分が集団とは異なっている…

ケネス・バーク『恒久性と変化』55(翻訳)

ヴェブレンの解決に対する批判 ヴェブレンの制度尊重主義(いかなる制度もその性質の欠点をあらわすという考えを伴った)も、同じ観点をとることになると予想されるかもしれない。ある能力は無能力になり得るという彼の発言は、ウナムーノの「悪徳と美徳は同…

ケネス・バーク『恒久性と変化』54(翻訳)

平和と戦争の争い イデオロギー的争いのパターンは、それを単なる精神的な投影と捉え、より基本的な生物学的矛盾にまで遡ることが可能である。シェリントンは、意識がどんなものであるにせよ、食物の狩りや捕捉に必要な過程で生じたとのだと指摘している。狩…

ケネス・バーク『恒久性と変化』53(翻訳)

第四章 倫理的混乱 悲劇による勧告 カントや神学者たちのように、倫理を超越的起源に位置づけることもできる。あるいは、功利主義者のように、倫理的重みを売り買いの付帯現象に過ぎないものと考えることもできる。しかし、道徳を経済の派生物と論じるにしろ…

ケネス・バーク『恒久性と変化』52(翻訳)

第三章 ベンサムの世俗的神秘主義 ベンサムの「行動の起源に関する表」 産業革命が最初に花開いたのはイギリスであった――そして、そこで、功利主義の学説が最も明確に定式化された。我々は既に、最大多数の最大幸福という世俗的な原理が、文化的な働きに関し…

ケネス・バーク『恒久性と変化』51(翻訳)

第二章 恒久性と変化 現代と古代思想との平行関係 ある定位の隆盛をその効用に帰したとしても、それが必然的に使用目的に役立つと結論はできない。それはかつては状況に適合していたのが、適合しなくなるまで生き残ったものかもしれない(文化的な時間差)。…

ケネス・バーク『恒久性と変化』50(翻訳)

会話の二つの側面 会話によるコミュニケーションには二つの機能が区別できる。会話は感情の共通の基盤を提供するという意味においてコミュニケーションである――或は、行動の共通の道具として役立つという意味でコミュニケーションである。原始的な社会ではこ…

ケネス・バーク『恒久性と変化』49(翻訳)

確実性の堅固な基礎 思想家は「裸体になった」――今日の単純な魂において、この傾向が文字通り衣服を脱ぐことによって直截的に象徴化されているのも偶然ではない。「ヴィクトリア朝の偽善」からの転換が象徴的な行動において究極的な表現に達している。同様に…

ケネス・バーク『恒久性と変化』48(翻訳)

第一章 因果性とコミュニケーション 遠近法の主要な転換 定位は概ね自己永続化するシステムであり、それぞれの部分が他の部分と協同しようとする。その構造を批判しようとするときでさえ、批評の参照点とするためにある部分は手つかずのまま残しておかなけれ…

ケネス・バーク『恒久性と変化』47(翻訳)

第三部 単純化の基礎 第一部は「記号の読解」を扱った。第二部は古い形の記号の読解と新しい読解との中間的な段階を扱った(動揺の段階であり、特殊な幻視的性質をもつ「スタイル上のガーゴイル」の礼賛でその不安定さが肯定される)。第三部では、記号の読…

ケネス・バーク『恒久性と変化』46(翻訳)

ある種の存在の哲学に向けて 混乱を避けるために特に言っておくが、我々は初期の魔術的或は宗教的合理化が「正しく」、回復されるべきだと言いたいがためにこうしたことを述べているのではない。我々が強調したいのは、神経構造が変わらない限り、社会が維持…

ケネス・バーク『恒久性と変化』45(翻訳)

結論 歴史的平行 第二部を通じ、我々は頻繁に過去の体系の「誤り」を尊重する姿勢を示した。極端な神秘家にしても、彼が見たしるしを解釈し言語化する方法については賛成できないかもしれないが、間違いなく何かについて語ってはいるのである。幻覚であって…

ケネス・バーク『恒久性と変化』44(翻訳)

宗教における回心と退行 『イエスの生涯の諸側面』という著作で、ジョージ・バーガーは、我々の知るキリストの生涯においては、回心の過程をたどることができないと述べている。キリストが十二歳のときに神学者たちと会話を交わし、父である神の仕事に従事し…

ケネス・バーク『恒久性と変化』43(翻訳)

第六章 意味と退行 純粋な、或は混じりけのない反応 敬虔が単に対象との類推だけでなく、状況や関係との類推に反応するのだという考えは、精神科医が心的苦痛の顕著な一例として認めている退行の現象になんらかの光を投げかけるかもしれない。強烈な経験とい…

ケネス・バーク『恒久性と変化』42(翻訳)

回心と連続性の法則 回心は通常、「段階的な連続」によって行なわれ、我々は一段一段、その要因が通常の言語によって承認されている出来事から、あらかじめ認められているわけではない出来事へと移っていく。思想家が結論にいたる連続性を確立しようするとき…

ケネス・バーク『恒久性と変化』41(翻訳)

リヴァースによって報告された事例の検証 マクドゥーガルのように、リヴァースもフロイトが機能不全の「心因性」についての研究に与えた刺激に大いに敬意を払ってはいるが、あらゆる動機の起源を性的なものに求めるフロイトの試みの妥当性については疑問を呈…

ケネス・バーク『恒久性と変化』40(翻訳)

誤称による悪魔払い なぜ患者は自分の混乱の本質や原因を語られることが必要なのだろうか。本当に、名づけることによって悪魔を追い出せるのだろうか。不調和による遠近法という考えは、誤称によって悪魔を追い出すことを示唆するだろう。名づけること自体で…

ケネス・バーク『恒久性と変化』39(翻訳)

マクドゥーガルによるフロイト主義の修正 『異常心理学の梗概』で、マクドゥーガルは、特に、フロイトの用語がマクドゥーガルが最も重要だと考える心的不均衡の要因、即ち、解離を除外していることを根拠に、フロイトの考えを非難している。マクドゥーガルは…

ケネス・バーク『恒久性と変化』38(翻訳)

第五章 世俗的回心 精神分析の基礎 第二部を終えるにあたり、解釈と治療とが最も明らかに合流する領域を研究すべきだろう。良き知らせを世俗的にもたらすもの、精神分析である。我々の観点からすると、精神分析は、単純な非宗教的回心の技術として扱える。そ…

ケネス・バーク『恒久性と変化』37(翻訳)

不調和の不調和な類別 新たな意味や発見の問題は個々人の傾向と混同される。多くの人間が古い定位の図式を単に壊してきたようだが、実際には、その明確さの度合いは様々だが、代わりに提示した新たな図式に従って壊していると言えるだろう。いま流行している…

ケネス・バーク『恒久性と変化』36(翻訳)

類推的過程の探索 解釈の仕事は、過度の単純化と類推的拡張の二つの過程によって完成する。我々は出来事をある関心にたった観点から性格づけるときに過度な単純化を行なっている――そして、我々は類推によって他の出来事にも同様の性格を見いだそうとする。歴…

ケネス・バーク『恒久性と変化』35(翻訳)

類推、隠喩、抽象、分類、関心、予期、意図の相互関係 ある者が一般的に認められている分類とは異なった切り方を試みようとすることは、「趣味のよさ」の限界を引き延ばそうとすることであり、というのも、よい趣味というのは、既に常識による用語法で示され…

ケネス・バーク『恒久性と変化』34(翻訳)

関心によって導かれる分類 我々の時代に一日の長があるとすると、それは歴史的心理学的相対性の莫大な記録をもっていることである。こうした相対的姿勢は、詩であろうと実験室であろうと、出来事を無数の観点から特徴づけようとする傾向を助長する。アフリカ…

ケネス・バーク『恒久性と変化』33(翻訳)

成功の検証 中世の思想家は、まさしく我々がいまでも従っている定位の一般的な型を用いているのだと述べる者もいることだろう。彼は、自分の幸福にとって重要だと思われる自然の関係を特徴づける宇宙論をもとに、出来事を予言し、行動を決めようとする。彼ら…

ケネス・バーク『恒久性と変化』32(翻訳)

第四章 類推による議論 類推と証明 類推の大きな危険は、類似性が同一性の証拠だと取られることにある。二つの事物が、我々の観点から見て顕著なある特徴を共通にもっているとき、我々はその共通の特徴を性質の同一性を示すものと取ってしまう。類推的思考の…

ケネス・バーク『恒久性と変化』31(翻訳)

隠喩の機能 「抽象と事実を混同するこの一般的とさえ言える傾向を避けるために」とスティーヴン夫人は書いている、「ベルグソンは抽象的な一般的概念で記述する代わりに、隠喩を用いてそれが実際にどんなものであるか事実を我々に見せようとすることもある。…

ケネス・バーク『恒久性と変化』30(翻訳)

ベルグソンの計画された不調和 哲学者アンリ・ベルグソンの定式は、体系としての不調和に最も近づいている。ニーチェはその手順を十分に首尾一貫して具体化した――しかし、私の知る限りでは、その特有の合理化を与えてはくれなかった。その合理化が最も明瞭に…